随所に伏線が散りばめられた良作。
物語の最後にすべての伏線が回収され、爽やかな読後感と納得感を味わえます。
『かがみの孤城』 辻村深月 著 ポプラ社
ある事件がきっかけで学校に通えなくなった主人公の、こころ。
自宅の中で過ごしていたある日、突然自分の部屋の鏡が光だして鏡の中に入り込むと、
そこは全然別世界の城の中。
こころと同学年の男女が集められ、狼面の不思議な少女が現れます。
狼面の少女は登場人物を赤ずきんちゃんと呼び、城の中でのルールを語り始める、、、
非常に丁寧な描写で描かれている小説のため、前半部分のこころの不登校になった原因に
触れている箇所は読んでいるこちらも胸が痛くなりました。
不登校、いじめ、友達関係、親子関係、子供にとっての大人の存在など、
重めの内容が物語の核になる部分にあります。
そこに物語全体を包む大きな仕掛けが施されています。
ただ、私はその仕掛けにかなり早い段階で気づいてしまいました(笑
上記したように非常に丁寧な描写をされているのですが、ところどころ不自然に
描写がぼやかされてい箇所があります。いくつかそういう部分に引っかかっていると、
自然と一つの答えに行きつきました。
私自身は仕掛けが分かった上で読み進めたので、少し斜に構えた感じで物語を読み進め、
「なるほどね。この会話はそういうことね」という感覚で読んでいましたが、
そういった斜めからの読み方ではなく、普通に楽しんで読めば最後に色々な伏線が回収されて
納得感と爽快感を味わえると思います。
仕掛けを理解した上でもう一度読み直すと、あらゆる部分に違和感が
上手く隠されていることに気づけると思うので、2度読みをオススメします。
近くに読んだ方がいるようなら、物語に隠された多くの仕掛けを共有しあうのも
面白いのではないかと思います。
読んだ後に誰かと語り合いたくなる。そういう本です。
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